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中古ピアノ販売、買取専門のグランドギャラリー。YAMAHAやKAWAIなどの国産ピアノをはじめ、スタインウェイなどの輸入ピアノも多数取り扱っています。

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ピアノなんでもコラム

「ピアノはなぜ黒いのか」の著書でお馴染みのスーパーピアノアドバイザー斉藤信哉さんによる連載コラムです。

コラムリスト

アップライトピアノとグランドピアノの違いは?

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これらのピアノの違いをお話しする前に、まずピアノが生まれた経緯からお話を始めます。

皆様は「チェンバロ(ハープシコード)」という楽器をご存知でしょうか。

この楽器は弦を“爪で弾(はじ)いて”発音するのですが、それに対して、「ピアノ」は弦を“叩いて”発音させます。

バッハ(1685年~1750年)が活躍していた頃は、鍵盤楽器はチェンバロが主流でしたが、弦を弾く爪(プレクトラムという)は長さが1cmにも満たないもので、幅もせいぜい2mmほど。

鍵盤を押すとこの爪が弦を弾いて音を発生させるわけですが、強い音を出そうとして鍵盤を強く押しても、出てくる音は強くはなりません。

そう・・・チェンバロは音の強弱が出せない楽器なのです。

この強弱の出せない欠点を何とか解決したいと発明されたのが、現代の「ピアノ」の始まりです。

弦を“弾(はじ)く”のではなく”叩く”方式に構造を変えたのです。

「クラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」…これが今から300年ほど前に発明されたピアノの名称です。

「ピアノ」と「フォルテ」が出せるチェンバロ、つまり弱い音と強い音を出すことのできるチェンバロという意味です。

この名称の「ピアノ」の部分だけを残して、現代の「ピアノ」という名前へ引き継がれていったのです。

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写真をご覧いただいてもご理解いただける通り、チェンバロはグランドピアノと形がよく似ています。

つまり、グランドピアノが本来の「ピアノ」なのです。

チェンバロに工夫をこらして出来上がったのが「ピアノ」ですから、当然ですよね。

アップライトピアノが発明されたのは1800年頃のことで、最初のピアノ(グランドピアノ)の発明からおよそ100年後です。

狭い場所に置ける、また馬車に積んで運ぶのに便利、などの目的で発明されたのではないでしょうか。

では、本題に入りましょう。
「アップライトピアノとグランドピアノの違い」ですが、この二つの楽器は、表現力においても機能においても、大きな差があります。
その違いを説明するのに例え話をしましょう。

いや、その前に、なぜアップライトピアノの発明が100年も後になったのでしょうか。
その答えは簡単、「不自然だから」です。

何が不自然かといいますと、弦を横(水平)方向に張って、それを下から叩く構造のグランドピアノに対して、アップライトでは弦を縦(垂直)方向に張って、それを横方向から叩きます。

弦を叩く部品を「ハンマー」と呼びますが、弦を打ったハンマーは、グランドピアノでは自重で元の所に戻り(下がり)、すぐに次の動作に移ることができます。

ところがアップライトピアノでは、そうはいきません。

弦を打ったハンマーは反動に加えてスプリングやヒモを使って元の所に引っ張り戻すのです。
ねっ、不自然でしょ。

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さあ、例え話です。

『グランドピアノは犬や猫、鹿、ライオンなどのような四足歩行の動物。アップライトピアノは二足歩行の人間。』

四足であった動物が腰を中心にして立ち上がったのが、二足歩行の人間ですね。

四足と二足とでどちらが機敏に動けるかといえば、四足に軍配が上がります。

これと同じで、アップライトピアノは敏捷性に欠けるのです。

四足のグランドピアノを腰を中心にして立たせたのが二足のアップライトピアノとお考えいただければ、ご理解いただけると思います。

そう、腰がギクシャクするのです。

例えば、タタッと可能な限り素早く、鍵盤の動きを出来るだけ小さく鍵盤をたたいてみて下さい。

アップライトピアノではなかなか上手くいきませんが、グランドピアノではいとも簡単。

これがピアノを立ててしまったための弊害で、弦を打つメカニズムも大分変わりました。

「トリル」といって一つの鍵盤を速く打鍵して発音させる奏法があります。

グランドピアノでは1秒間に15回ほどの打鍵が可能ですが、アップライトピアノではその半分が限界です。

だからこそ演奏が上達すればグランドピアノを、ということなのです。

さらにもう一つ、大きな差があります。これも例え話にします。

『アップライトピアノは鉄砲玉。グランドピアノは遠隔操作のできるミサイル。』

えっ、何のこと? 
と思うでしょ。鉄砲玉は、撃った瞬間に進む方向が決まってしまいますが、遠隔操作のできるミサイルでは、撃ち出した後でも進む方向を変化させることができます。

アップライトピアノでは、指が鍵盤に触れた瞬間に、既に出てくる音の大きさや音色が決まってしまいます。

一方、グランドピアノでは、指が鍵盤に触れた後より底に至るまでの間の力の入れ具合などにより、出てくる音の大きさや音色を変化させることが出来るのです。

では、どうしてアップライトピアノとグランドピアノとで、これ程の能力の違いが生ずるのでしょう。

これを、分かりやすく説明するのは、たいへん難しい!

えーと、あっ、そうだ!アップライトピアノでは、鍵盤に指が触れた瞬間に、まるで蹴飛ばされたボールのようにハンマーが勝手に飛んでいくのです。

グランドピアノは、そうそう、ボーリングのボールのようかな。

ボールを持って腕を振りはじめた後でも、進む方向や曲がる方向、スピードも自在に変えることができますね。

これで両者の違いが、何となくご理解いただけたのではないでしょうか。

最後に、音量のバランスについてお話しましょう。

アップライトピアノを弾いていると、低音側の音量が大きく出てしまい高音側の音量が負けてしまう、そんな経験はないでしょうか。

実は、アップライトピアノは形や構造が原因で、もともと低音側の音量が大きく高音側の音量が小さいのです。

一方、グランドピアノの音量は、低音から高音までバランスが良く均一です。

しかも、弾き方によって自由に音量のコントロールができますから、表現の幅も大きくアップします。

まだまだ色々な違いがあるのですが、話がもっと長くなりそうですので、今回はこれで終わりにしたいと思います。

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