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中古ピアノ販売、買取専門のグランドギャラリー。YAMAHAやKAWAIなどの国産ピアノをはじめ、スタインウェイなどの輸入ピアノも多数取り扱っています。

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ピアノなんでもコラム

「ピアノはなぜ黒いのか」の著書でお馴染みのスーパーピアノアドバイザー斉藤信哉さんによる連載コラムです。

コラムリスト

輸入ピアノと国産ピアノの違いは?

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ひと口に「輸入ピアノ」といっても、伝統的な欧米メーカーのピアノもあれば、中国製や韓国製、ロシア製、また国内では全く知られていない数多くのピアノメーカーがあります。また昨今では日本のピアノメーカーがインドネシア、ベトナムなど東南アジアの工場で製造していますが、これも一種の「輸入ピアノ」と捉えることができます。

ですので、今回は伝統ある欧米の有名メーカーのピアノを「輸入ピアノ」と考えて話を進めていきます。

まず、伝統的な欧米の有名メーカーと日本のメーカーのピアノは何が違うのか、何をもって違いとするのか・・・分かりやすくお伝えするのは非常に難しく、どこから説明すれば良いのかも大いに迷うところです。

それで、こんな話から入っていきたいと思います。琴や三味線などの日本の伝統的な和楽器を、もしも欧米で作ったら・・・。

どうでしょう。欧米で完成度の高い和楽器が作られたとしても、私たち日本人は抵抗無く使うでしょうか。とりわけその道のプロ、演奏家達が使うでしょうか。

おそらく使わないでしょう。その理由は、何となくわかるような気がしませんか?

やはり日本古来の音楽は日本で作られた楽器でないと表現できないのでは・・・そんな風に考えるのではと思います。このことをピアノに当てはめてみれば、私のお伝えしたい事はご理解いただけるでしょう。

日本のピアノがいくら頑張っても、欧米のピアノにはなれない

2008年にウィーン(オーストリア)の銘器「ベーゼンドルファー(Bösendorfer)」がヤマハによって買収されたとき、『ベーゼンドルファーがベーゼンドルファーじゃなくなっちゃう』と、ウィーンの音楽家達が猛反対をしました。ヤマハ=日本人にウィーンの歴史や伝統、文化を理解できる訳が無いと・・・。

私自身も十数年前にウィーンを訪れたことがありますが、その時に同行した仲間の一人が「この街は時間が止まってる!」と言いました。

そう、“音楽の都”ウィーンでは、時間が非常にゆったりと流れているのです。

ウィーンの人々は幸せを感じながら日々生活をしており、この街で生まれ中世よりずっと愛され続けてきた“ウィーンの誇り”ともいえるベーゼンドルファーを、時間に追われる毎日を過ごす日本人による買収に猛反対するのも、当然といえば当然でしょう。

ドイツのピアノ工場を視察したときにも同じようなことを経験しました。訪問したのは5月のことでしたが、工場は朝の6時に始まり午後3時には終わるのです。この季節の日没は夜の8時頃ですから、人々は仕事を終えてからの約半日をゆったりと過ごすことが出来るのです。

ヨーロッパのピアノは、こうしたゆったりとした生活環境の下で造られています。ですのでピアノ造りにも充分な時間がかけられ、それが質の高い響きとなって現れてくるのです。

日本のピアノとの違いは、こうした余裕から生まれてくるのではないかと感じることができます。

イタリアでも活躍されたオペラ歌手、高丈二(こう じょうじ)さんが、かつてテレビで「いくら頑張っても日本人はイタリア人にはなれない」と言っていたのをはっきりと覚えています。また戦後の日本の音楽界を演奏者・教育者としてリードしたピアニスト、園田高弘(そのだ たかひろ)さんも、「いくらドイツ音楽に傾倒してもドイツ人にはなれない」と言っていました。

つまり、日本のピアノがいくら頑張っても、欧米のピアノにはなれないということです。

生活環境も、歴史も伝統も、人種も宗教も全く違いますし、気候風土も違いますから、日本では欧米と同じようなピアノが造れるはずはありません。

もう一つ、大きな違いをお話ししましょう。

ピアノの個性についてです。欧米のピアノには強烈な個性がありますが、日本のピアノは没個性的です。なぜ没個性的かというと、日本のピアノが大量生産、大量販売を目指しており、明確な個性を持たせてしまうと不特定多数の人に買ってもらえなくなるからです。

誰もが及第点をつけてくれないと買ってくれる人が限られてしまうため、強烈な個性は避けられるという訳です。対して伝統的な欧米メーカーのピアノは「個性を認めてくれる人だけが買ってくれれば良い」といった考え方が底流にあるように、私には思えます。

例えばフランスの名門メーカー「プレイエル」はショパンが愛用したピアノとして有名ですが、明るく力強い音色が特徴で、それがこのピアノの個性となっています。

ショパンの祖国ポーランドは、彼が国を出た後に外国からの侵略で消滅してしまいますが、この悲壮で病弱な彼を支えたのがプレイエルだったような気がしてなりません。暗い心を勇気付けてくれるようなプレイエルの明るい音色。明るい太陽の下では影もくっきりとしますが、それと同じようにプレイエルの音色は、ただ明るいだけではなく暗い影の部分も表現できる。

それがショパンがプレイエルを愛奏した最大の理由だったと、私は感じます。

ドビュッシーは、「すべてのピアノ音楽はベヒシュタイン(ドイツ)の為だけに書かれるべきだ」と言っています。

“高貴な音のピアノ”といわれるように、ベヒシュタインの音はクリアで気品があります。ペダルを踏み続けてずっと音を重ねても、それぞれの音が明確に聞き分けられます。ドビュッシーがこのピアノを愛した理由は、ベヒシュタインに触れてみるとご理解いただけるでしょう。

しかし、プレイエルのタッチは抵抗感があり、初心者には重いかもしれません。

音色も明るく力強いので、良くないと思う方もいらっしゃるでしょう。ベヒシュタインの音はクリアですが、繊細過ぎてミスが目立ってしまうと嫌う方もいます。このように強烈な個性には両面性があります。それを無難に避けたのが日本のピアノというわけです。

今回輸入ピアノの例に挙げたのはプレイエルとベヒシュタインの2つだけですが、他のメーカーもほとんどが個性的です。それは欧米の人々の、個性を尊重する生き方が影響しています。

このあたりの感覚は、「みんなと一緒がいい」という私たち日本人とは大きく違うところです。

何はともあれ、日本のピアノだけでなく、輸入ピアノにも出来るだけ多く触れてみて下さい。

そのピアノの持つ個性と皆さんの個性が一致するピアノが必ず見つかります。

 

気の合う人とは、いくらでも話しが弾みますよね。ピアノも同じで、気の合うピアノに出会えればずっと弾いていたくなるものですよ。

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